創設事業は、酒匂川の支川河内川上流山北町神尾田地先に三保ダムを築造し、下流の小田原市飯泉地点に取水施設を設けて原水を取水し、3つの浄水場で浄水したのち、神奈川県、横浜市、川崎市及び横須賀市の4つの構成団体に1日最大1,454,800角の水道用水を供給することを目的としたもので、昭和44年度から昭和53年度までの10ヶ年をかけ、ダム、取水堰、導水トンネル、浄水場、送水管などの建設を行った(総事業費約2,891億円)。この事業の完成により、酒匂川水系は昭和54年4月から全量給水体制となっている。 相模川水系建設事業 相模川水系建設事業は、創設事業の完成後も人口の増加や生活水準の向上などに伴って、県内の水需要は、今後とも増加するものと想定されたことから計画されたもので、相模川の支川中津川に建設省(現国土交通省)が建設する宮ヶ瀬ダムに水源を求め、海老名市社家地点に取水施設を建設することなどにより、新たに1日最大1,209,000角の水道用水を供給しようとするものである。 | ![]() |
創設事業とこれまでの相模川水系建設事業において発生した工事図面のアパーチュアカードは約3万枚。1工事完成ごとに企業団作成仕様によりアパーチュアカードが作成されキャビネットに集積されるるが、カードの中には本来記載すべき分類整理番号などはカード上に印字されずに、また検索台帳も発生都度に追加できていない。1996年に集積されたカードと検索台帳を整備したが、その後発生した図面情報は未整備のままであった。つまり工事完成図面情報のアパーチュアカードはあっても必要な図面が瞬時に検索抽出できるデータベースは存在していない、という中途半端な、しかも一部の職員しか利用できない環境であった。 阪神淡路大震災から既に久しいが、あの当時のライフラインの復旧対策は、危機管理体制強化への警鐘を鳴らした。神奈川県民へ安定した水供給事業を展開している企業団にとって、危機管理を視野にいれた施策は2006年完成をめざすプロセスの中で維持管理の充実と併せて考えなければならない。その視点から工事完成図面のデジタル化と浄水場を結ぶネットワーク化構想が持ち上がった。 | 工事リスト ![]() |
企業団の提示したファイル検索の要求は、施設別と神奈川県内8分割図面に表示されている導水及び送水路線上の各工区から工事名称と図面一覧を表示しさらに続けて要求図面が瞬時に検索できることである。例えば、ある地点の「送水管図面」を検索したい場合、送水路線地図からその地点を特定しなければならない。工区にリンクボタンを貼り、工事名と図面名称の属性データ検索システムが作業上短時間にできるファイリングソフトとして、しかも前述した編集機能やレスポンス機能面からKIP製「K-FILE」を選んだ。 アパーチュアカード3万枚をデジタル化で保管されると仮定すると、検索データベースとイメージ容量を含めサーバークライアント方式で20GBは必要になる。レスポンスの高い検索と表示機能を確保するとなれば1アパーチュアカードごとにインデックス・レコードの作成と路線地図に約200ケ所の工区にリンクボタン作成を行った。 | 地図 ![]() |
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今後、工事終了後に発生する図面はアパーチュアカード(バックアップ用)とデジタルイメージの2つの記録媒体で管理活用され、安定した水供給の維持管理と危機管理に貢献されていくだろう。
デジタル化への期待は官民問わず急速に増えている。それだけデジタル化のもたらす効果が多いと予測し、期待している現われである。導入後、日常業務の上で利用し続けると、さらにデジタル環境への期待が膨らみ、修正変更、バージョンアップが必ず生ずるものである。思った効果が現れずに、また一部の者しか利用できないものでは組織内にアピールもできない。だから拡張性のあるデジタルシステムを求める理由がそこにある。言い換えると、バックアップ体制とデジタル情報の維持管理費を導入当初から考慮しなければならないと意識している組織のデジタル化は間違いなく継続成功する筈である。
今回ご紹介した神奈川県広域水道企業団の完成工事図面のデジタル化の目的は、最終的にはライフラインの維持管理の充実である。長期に亘る管理活用の情報はデジタル化だけでは不十分であり、マイクロフィルムの長期保管の特性はデジタル化情報を十分サポートすることだろう。