株式会社 横浜マイクロシステム

ケース・スタディ

時代のニーズに対応した画像情報技術利用の最新アプリケーションを紹介


デジタル図面管理における不可欠なマイクロフィルム

-導入事例に見るコストダウンとイメージからのマイクロフィルム変換


長期保存に適したマイクロフィルムを継続するために大幅なコストダウンを迫られた企業が選択した方法は、出力した紙図面ではなく、デジタルイメージから直接マイクロフィルムを作成することです。これまで、マイクロフィルム化の前に必要とした出力コストとそれに伴う労務費は、約500万円を超え、経費削減すべき課題の一つでした。その実現に向けての取り組みと新しいマイクロフィルム作成技術の仕組みについてご紹介したいと思います。

株式会社ケイアイピー
東日本営業部東京営業部
参事 笹隈 俊一


*データバックアップにマイクロフィルムを採用*

世の中、何時の間にかデジタル一辺倒になってしまったと思えるくらい電子化の浸透は凄まじい勢いです。
この勢いに圧されて長年培った情報の保存媒体をあっさりと電子媒体に依存する傾向はどうも解せません。
そんな中で情報の大切さと価値を十分に知り尽くして、保存の本質をマイクロフィルム媒体に求め、これからもマイクロフィルムシステムを続けることを決定した企業の判断とその業務を受託事業として長年携わり、熱意によって、新技術によるマイクロフィルム作成へ転換を決意、実行に移したマイクロラボ業者の事例を通して、近未来のマイクロフィルムを考えてみたいと思います。

はじめに

写真の歴史とともに始まった写真技術の一つに、ドキュメント情報を極限まで小さくし、持ち運び、拡大投影して再現する一連のストーリーがあります。スパイ映画で見かけるシーンです。実際にMill規格の示すとおり軍事目的に開発されたマイクロフィルムが民間の手に触れて半世紀が過ぎました。
情報の保存と活用がマイクロフィルムに期待されていたマイクロ全盛の時代もやがて電子メディアの出現で明らかに後退したかのように思えました。
しかし情報の保存と活用をすべて電子メディアへ乗り換えることで解決するだろうか、いささかの疑問を持つことは当然と言えます。
情報活用は電子メディアに勝るものなし、しかし保存は果たして電子メディアで大丈夫だろうか。電子メディアの弱点は物理的障害に軟弱であることです。特に長期の保存となると管理コストもないがしろにできません。
こんな議論を経てマイクロフィルムによるデータ保存を選択、電子化環境と融合した新しいマイクロフィルムの「カタチ」を実現させようとしているA社(お客様の都合により匿名とさせて頂きます)で生き残るマイクロフィルムの姿をご紹介します。



A社におけるマイクロフィルムの歴史

マイクロフィルムを情報の保存媒体として採用された昭和30年当初から40年近くの間、図面情報の保存と活用を担ってきました。
近年、図面情報の電子管理システム導入が始まり本年4月から全面稼動をはじめました。
マイクロフィルムは除々に主役の座を離れることになり、保存媒体としての役割に徹することになりました。同時に設計環境がCADへ移行され電子認証システムが採用された後、紙原図が消滅しようとしています。殆んどのドキュメント情報が紙媒体を経ることなく直接電子媒体へ保存されることで大幅なコスト削減を達成し、電子環境導入の成果が評価されました。こうした環境の中で図面情報の永久保存媒体として、マイクロフィルムの作成は必要性に推されて続けられています。
全社で作成する新図が1日平均400件に上る設計活動は新しいものづくりへの挑戦をスローガンとするA社の証でもあります。
コスト削減の風が吹き続ける昨今、マイクロフィルムをあらゆる観点から分析、その存続が評価され、時代にマッチしたシステムとして生まれ変わろうとしています。



マイクロフィルムシステムを存続させるための変革

(株)ケイアイピー(KIP)は長年にわたりA社のマイクロフィルム作成と共にその変遷を見てきました。
近年まで、3M2800マイクロフィルムプロセッサーカメラ(2台)を設備して企業の社員によってマイクロフィルムの撮影が行われていました。
これもコスト削減等の余波で数年前に業者委託で撮影する方法が採られ、マイクロラボ業者へ委託されることになります。
コストを厳正に管理しながらの運営で、無駄を極力省くのは当然のことと言えます。
折しも、平成8年のJIIMAショーでKIPが発表した電子データから直接マイクロフィルムにプロットするシステム(CADMIC5000)は話題に上りました。しかし電子情報と紙情報が並立する中では必ずしもコスト削減の目玉になりえないことも重要な評価ポイントでした。



マイクロフィルムプロッタ
マイクロフィルムの将来を見据えながら、設計図面の電子化システムは着実に成長し、CAD使用率も50%を超えたあたりから電子情報からマイクロフィルムを作成する話が真実味を帯びてきました。平成13年、KIPが電子マイクロの新製品として発売に踏み切ったPOLYCOM4000が新たな可能性をもたらし、実行への検討を促進しました。可能性は実用性を実証するまでただの可能性に他なりません。それから一年近くを費やして可能性が実用性に変わりました。
A社では折しも図面管理システム立ち上げの最終段階にあり、電子データからのマイクロフィルム作成はこの新しい図面管理システムに無理なく融合して、平成14年9月から従来のマイクロ撮影受託を引き継ぐ形で電子情報からのマイクロフィルム作成を(株)横浜マイクロシステムの受託事業として本稼動を開始しました。

新マイクロフィルム作成技術について

成果品としてのマイクロフィルムはすでにあらゆる角度の批評を経て、その証拠保存能力が電子媒体に唯一勝るものであることが評価されています。新時代のマイクロシステムとして名乗り出たKIPの新商品POLYCOM4000(マイクロフィルムプロッタ)はマイクロフィルムの工程を大きく変えることで電子情報とマイクロフィルムの境をなくしました。つまり、マイクロフィルムと電子情報が物理的に融合できたことになります。
この融合によって、電子情報の保存媒体として位置付けられることは言うまでもありません。
さらに原図のない設計(CAD)が主流となった今、紙へのプロットは無用となり電子情報のまま直接マイクロフィルムへプロットする(情報から唯一のイメージ記録保存と言えます)ことが可能になりました。
JISマイクロ規格に準拠したPOLYCOM4000はマイクロフィルム作成工程を変貌させ、合理化、省力化だけでなくシステムの一部として機能することで大きくコストの削減に寄与することになります。
更に電子情報で決済される多くの意思決定情報に対するエビデンスとして、紙への印刷に変わる強力なイメージ記録媒体となります。



コスト削減にかかわるマイクロ作成工程の変化

従来のマイクロフィルム作成と大きく違うことは、フィルムにイメージを描画する方法です。
レンズを使った光学像を写す方法から、電子像をレーザービームによって描画する方法に変わったことで多くの工程変化が起きました。
従来通り紙原図による管理が主体であれば決して歓迎されるシステムとは言えませんが、先に触れた通り大方の図面管理が電子化して、電子情報での管理が主体になった今日形勢は逆転し、価値観の変化が起きても不思議ではありません。
つまり、電子情報が氾濫する中では紙情報は非常に不便で管理し難い媒体となるのです。
まして、マイクロフィルム撮影のために紙図面を作り撮影以外の利用価値がない(使用後の焼却費用まで必要になる)工程をつくり出す従来のマイクロ撮影が歓迎される訳がないのです。
このことがマイクロフィルムのよさが判りながらマイクロフィルムから離れざるを得なくしていた最大の原因でした。
しかし電子媒体と融合したマイクロシステムが出現すれば障害は払拭されるはずです。
当然、電子媒体での情報移動や通信が簡単にできるだけでなく、手許のPCネットワークに取り込めて、そのままマイクロフィルムへプロットできるシステムへの移行はマイクロフィルムをより活性させる要因になるだけでなく更に新しいマイクロフィルムの用途を広げることを示唆しています。
そしてもっとも重要なことはコスト削減に繋がるマイクロフィルム作成工程が出現することです。
更に言うならば、データバックアップシステムの中にマイクロフィルムアーカイブを取り入れれば電子媒体でのバックアップに頼る情報管理コストより、遥かにコスト削減が進むことになります。バックアップ情報には活用保管と永年保存がありますが、永年に類する情報は高価な電子システムで管理するには経費の無駄使いと言えます。
やはり保存経費のかからないマイクロフィルムは捨てがたい媒体です。
更に、マイクロ保存の情報に出動命令が出されても、フィルムスキャナーを通せばすぐに電子情報へ変貌させることができます。
これらの機能や用途を情報管理システムに組み入れて設計することがトータルコストを削減するために必要であると確信します。







コスト削減の実際(具体例)

現在事例でご紹介しましたA社では新規設計のCAD化率が進み紙原図の出力は必要最小に止まっています。図面は描き終わると電子認証され、紙へプロットされることなく図面管理システムへ電子登録されます。生産ラインは手許のPC端末から必要な図面を見ることができ、同時にオンデマンドプリントシステムによってプリント配信されます。マイクロフィルムの作成は、図面管理システム端末から撮影ファイルとして取り出したデータ(Tiff)を委託業者へ送り、受託業者がPOLYCOM4000によって、マイクロフィルムへプロットします。
ここまでの工程で従来の撮影に比べてコスト削減にあたるものは以下のとおりです。
1.撮影用図面の貸し出し(原紙のないものはプリント出力して対応)*1プリント当り平均\100の削減
2.撮影終了後の原稿回収(不要になった図面の焼却処分)*1プリント当り平均\30の削減
3.デリバリー(原図運搬)*CDケースでの搬送に変わり合理化
4.撮影作業(人件費)*大幅に削減できて効率化(技術者不要)
以上の4項目が実質的にコスト削減に寄与しているものです。
A社の決断理由としてこれらのコスト削減の事実が前提となっていることは当然です。
更に目に見える無駄の消滅が大きな動機付けになったことを忘れてはなりません。


POLYCOM4000とは

 

事例に見られる通り、電子情報の中で異種媒体を融合させることによってコストの削減を生むことが電子化時代の課題であるとするなら、それは正にPOLYCOM4000に課される使命と言えます。
高品位高画質に傾注する電子ファイリングの画質はマイクロフィルムへイメージ記録して残すには極めて好都合と言えます。高い品位のイメージを壊すことなく永年保存を期待できるマイクロフィルムは本格的データ保存に値するからです。
ファイルデータの扱いは電子ファイリングで最も汎用されているTiff形式ラスターイメージデータを、TCP-IP(LAN)を介して通信する仕組みは、今最も広く普及して使い慣れているPC LANとネットワークプリンターの関係であり、設備の導入にも障害なくとても簡単です。

 

撮影はJISおよびANSIを標準装備するテクニカルモードと新たに挑戦するオフィスモードから成り、いずれも従来のマイクロフィルム解像度を超える高品位画質とデジタルならではのシャープな画像品位を提供します。実際の撮影手順は、撮影しようとする電子データの原稿サイズ(JIS、ANSI規格に合ったもの)とデータフォーマット(Tiff以外のデータおよび分割撮影の場合はあらかじめアプリケーションソフトを使い処理しておきます)を管理したデータ550件を用意するだけで1ロール(35mm、100ft)分の撮影準備ができます。
用意されたデータファイルをLAN上のPCに開き、POLYCOM4000のコンソールウインドでCFGスプーリングによってプロットファイルをつくります。
ここまでの作業が仕込みで平均30分要します。このあと1.5時間ほどでファイルスプーリングが終わり、POLYCOMをスタートさせます。
あとは6時間後、撮影の終わったフィルムを取り出して、自動現像器(現用の富士写真フィルム社製品、コダック社製品の機材薬液がそのまま使えます)を通して現像を完了します。
1工程(100ft)に必要な時間は約8時間、その内で人が携わる時間は約1時間必要です。撮影中は無人運転です。電源の保証があれば夜間の運転も問題なく行えます。



POLYCOM4000の導入によるメリット

「何をメリットとするか」、で観点を変えなければならないが、一言で言えばコスト削減ではないでしょうか。
コストを削減するにはさまざまな方法、手段が執られているなかで最も有効なことは無駄を省くことであると言えます。
「果たして無駄とは何か」、本気で考えてみると意外な事実が浮かんできます。
まず、無駄の発生メカニズムを見てみましょう。無駄は個々のファクターの変化についていけず置き去りにされる工程です。
本来すべてのファクターを無理なく同時に変化させるのが変革と言えるのでしょうが、特に人手に任せている部分は見逃され、黙認されて華やかな面が先行して変化してゆくことがままあります。このような取り残しファクターが累積して経費に現れたとき無駄であると烙印を押されるのです。変革のメリットとは無駄の烙印を押されたファクターを一掃することで解決するのです。
すでに何度も触れた通り、電子ファイル、CAD製図が進む中で新たに芽生える無駄もあります。それは紙原図の消滅(改善効果最大の変革事業で成し遂げられた結果)がつくり出した無駄としてマイクロ撮影のためだけの紙原図作成だったのです。さらに使用後の焼却処分まで付いて、目に見える無駄となったことです。
こうして改善の副産物として作られた無駄を取り除くためには更なる改善が必要になります。
それで「メリット」は、とよく聞かれますが、実際には手掛けようとしている改善に何を期待するか、さらにはその期待をどれだけ果たせるか、で決まるものです。
こうした考えに基づいてPOLYCOM4000によるマイクロフィルム作成に踏み切られたA社の決断は目の前にたたずむ無用の工程(無駄)を排除することから始まりました。つまり仕事の流れを変えることが変革の中心にあり、そのために何を如何するかを考えて具現化する方法です。
これから同じような問題に取り組まれるであろう方々に少しでも先の明かりを認めていただけるならと思い、新技術とその事例をまとめてみました。
最後に弊社の趣意にご理解いただき、プロジェクトを推進いただきました関係各位に厚くお礼申し上げます。